ヨモ大陸物語 :アウフヘーベン号 発進
月の裏側に築かれた秘密基地
七人のネオ・サヴァンたち
沈思黙考の末に組み上げたパズルの完成を
静かに待っていた
彼らの前に鎮座するナノマシーン治療機器の集合体
胎児性ガンを患うマリーとローランの息子
パルタを治療するために開発された
専門知識を結集 暗黙の了解の下で構築したその装置
隠蔽の超天才 コクトーの監視下
いつしか宇宙船の形を成し 言葉を交わさずとも
目的を共有していた
その時は、突如として訪れた
監視モニターに映る太陽
まるで巨大な欠伸をするかのように
中央から口を広げ始めた
ネオ・サヴァンたちが理論的に予測していた
「太陽の欠伸」太陽と地球を結ぶ空間に水平に
発生した巨大な磁気竜巻 凸レンズのように
太陽からのデルタ波動を収束
大量のハニカム波動を生み出した
「来たか…」物理学者のカンが呟く
高密度のエネルギー波は地球へと降り注ぎ
あらゆる分子構造を破壊 地上の生命を死滅させていく
絶望の光 それは同時に唯一の希望の合図
地中で資源収集を担っていたナノマシーン群
デルタ波動の助力を得て
その命令を実行する ー宇宙船化ー
ナノマシーン治療機器の集合体
「エンジン、始動するぞ」ローランの言葉に
全員が頷く 秘密裏に開発を進めてきたハニカム波動エンジン
拡散しやすいデルタ波動を6本結束させて
安定的なハニカム波動を造り出す
莫大なエネルギーを得る
そのエンジンを起動させるためのスターター
今まさに地球を滅ぼさんとしている
「太陽の欠伸」そのもの
基地全体が微かに振動を始める
船体に搭載された六基のデルタ波動発生装置
降り注ぐハニカム波動に共鳴
凄まじいエネルギーを生成していく
「七福神は宝船に乗らない…」
彼らはただ、自分たちの作り上げたパズルのピースが
完璧に組み合わさったことを確信していた
安定的なデルタ波動で治療は続く
船内の一室 常温凍結から目覚めたばかりの
幼児パルタが静かに眠っていた。
ネオ・サヴァン、マリーとローランの息子
彼こそが、この船が守るべき唯一の未来
「発進!」凄まじい轟音とともに
ハニカム波動エンジン搭載のアウフヘーベン号
静寂の月面を離れ 眼下には
ハニカム波動によって融解し、赤く染まっていく地球
彼らの仕事はまだ終わっていない
アウフヘーベン号が地球の引力圏を脱する間際
七人は最後の任務に取り掛かる
船の強力なハニカム波動通信機能
彼らが密かに地球の地中深くに残してきたパルタの塊
通称「大パルタ」へ向けて最後の指令
それは、いつか再び生命が芽吹くであろう
未来の地球のための 最後の願いであった
指令を送り終えたアウフヘーベン号
静かにその進路を宇宙の深淵へと向ける
幼きパルタ―「小パルタ」を乗せた
アウフヘーベン号は、生物が死滅した地球を後にする
数千年、あるいは数万年にも及ぶ宇宙の流離
後に「ヨモ大陸物語」へと繋がる長き旅の始まり


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